【復活節第3主日礼拝】 2008年4月6日(日)午前10時半
ルカ福音書による説教「神が奪った言葉、神が与えた沈黙」 牧師 佐藤誠司
聖書:ヨブ記42章1〜6節・ルカによる福音書1章5〜25節
冒頭の献呈の辞を終えて、いよいよルカ福音書の本文に入ります。この壮大な福音書の最初に、ルカはどのような物語を語ったことでしょうか。それはこの福音書の主題ともいうべき物語。祭司ザカリアが神の介入に直面して不信仰を露呈し、言葉を失ってしまう物語です。でも不信仰の露呈や言葉の喪失が、どうしてこの福音書の主題になるのかと不審に思われるかもしれません。しかし、ナザレ人イエスにおいて神が決定的な仕方で介入してこられた。そのとき明らかになるのは、人間の信仰ではなく、不信仰ではないでしょうか? そしてそのとき人は御業の前に言葉を失い、口を閉ざすのではないでしょうか? ガリラヤ湖で主イエスと出合ったペトロは、思わずこう言いました。
「主よ、わたしから離れてください。わたしは罪深い者なのです。」
また3月に読んだ十字架と復活の物語もそうです。主イエスの十字架の周りで明らかになったのは人間の罪と不信仰ですし、エマオに向かう道で明らかにされたのも、二人の弟子たちの不信仰でした。神の決定的な介入によって白日のもとにさらされるのは、やはり人の奥底にある神への不信仰ではないでしょうか? しかし、ルカは人の不信仰を冷たい虚無的な眼差しで見ているのではありません。ルカの眼差しは人の不信仰の向こう側の一点に注がれているからです。その一点とは、神は、主イエスは、人の不信仰と罪をどう扱われるか、どう包み込んでくださるか。その一点を見据えて、ルカは人の不信仰を描くのです。
ヘロデ大王の時代に、ザカリアという祭司がいた。妻はアロン家の血筋で名はエリサベト。この夫婦を神は選ばれたのです。ザカリアがくじに当たって神殿の聖所で香をたく役にあたったときのこと。重大な役目です。なぜなら、この役は、神がその民を覚えていてくださり、誓いを捨てておられないことを示され、それを神殿の外で祈っている人々に伝え、人々に先立って祈りをささげる光栄な役目だからです。神の御旨を伝える役目なのです。ところが、ザカリアがすべての「おつとめ」を滞りなく終わろうとしたとき、異変が起きる。主の天使が香壇の傍らに立ったのです。ザカリアは「それを見て不安になり、恐怖の念に襲われた」と書いてあります。天使は告げます。
「恐れることはない。あなたの願いは聞き入れられた。あなたの妻エリサベトは男の子を産む。その子をヨハネと名付けなさい。」
洗礼者ヨハネの誕生を告げる言葉です。ところが、ザカリアはこれが信じられないのです。自分たち夫婦はすでに老年だから。ザカリアの不信仰が露呈されたのです。天使は言います。
「あなたは口が利けなくなり、この事の起こる日まで話すことができなくなる。時が来れば実現するわたしの言葉を信じなかったから。」
ザカリアは言葉を奪われます。しかし、それは彼に沈黙が与えられた瞬間でもありました。誰に対してでもない。ただ神の前に、御業の前に、沈黙が強いられた。これは素晴らしい恵みではないでしょうか。沈黙の中で神の御旨を問い、御業を仰ぎ見ることが出来るからです。そして約束の御業が成ったとき、ザカリアの口から賛美の言葉がほとばしり出るのです。
ルカがこの物語から福音書の本文を開始したのは、私たち読者にも、神の前に沈黙し、御業を前に賛美の声をあげるザカリアと同じ道を歩ませるためではなかったでしょうか? 言葉が奪われるのではない。沈黙が与えられるのです。御業の前に黙する恵みが、ここにある。礼拝の中にあるのです。今週も主の恵みと平安が豊かにありますよう祈ります。
【予告】
○次週の主日礼拝 4月13日(日)午前10時半 復活節第4主日
2008年度主題聖句による説教「目を覚まして、信仰に立て」 牧師 佐藤誠司
聖書:第一コリント16章13節・マタイ福音書26章36〜46節
○礼拝の中で幹事、教会学校教師、奏楽者の任職式を行います。
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